2012年09月15日

有機EL照明の概要

LED照明の次世代高効率照明として期待されているのが有機EL照明であり、製品も2010年ぐらいから発売されている。有機ELは直流電流を流すことで有機化合物からの発光が得られる固体発光デバイスであり、高発光効率、低動作電圧、水銀フリーといった将来の光源に相応しい特長を持つことはよく知られているが、さらに照明機器用としては、点光源ではなく均一な輝度を持ち、厚さが数ミリの薄くて軽い面光源であり、波長域が広く、チラツキが無いので目に優しい光であることが重要な利点となる。近年、有機EL の材料およびデバイスの進化やコスト改善は目覚しく、効率や寿命の点では既存の光源と同等レベルにまで達しつつあり、特に白色有機EL は一般照明用途への適用が期待されている。

有機EL照明技術は、有機ELディスプレイ製品が先行して量産化されているので、そこで使われた装置や材料のコスト低減の恩恵を受けて、技術的や価格的な課題が解消されて行く状況にある。工場も有機ELディスプレイで使ったラインを転用すれば、装置の償却費の負担が軽減できる。このように、有機ELディスプレイ産業の動向も、有機EL照明の今後を予想する上で見逃してはならない。

ディスプレイ分野と照明分野の技術的な違いは、主に次の4点である。
●ディスプレイ分野では、赤、緑、青の3色の発光素子を精密に作りこむ技術が必要。
●ディスプレイ分野では、画像や動画を表示するための高度な制御装置が必要。
●照明分野では、ディスプレイに比べ極めて明るい光が求められ、さらに大面積を均一に光らせる技術が必要。
●照明分野では、一般の照明器具としての低価格化と、量産化、長寿命化が重要。

有機ELのELとは、エレクトロ・ルミネセンス(電界発光)のことであり、有機EL照明は、電気を流すと光る性質をもった有機物質(発光体)を使った照明である。有機EL(OLED)は、有機物質自体が発光するためにデバイスを軽量かつ薄くすることができるほか、プラスチックや金属箔などの曲げられる素材の上に素子を作って自由な形状を得ることができる。また、発光材料を平面状に印刷するなどして面状に発光することができるため、有機ELを壁、窓、天井の一部に用いて照明に利用することも可能である。衣類や制服の一部に用いて、光らせることや色を変えることも可能である。

有機ELは基板上に薄い膜を何層も重ねた構造になっていて、2層の電極に有機物層を挟んでガラスやプラスチックの基板に載せただけの薄くシンプルな構成である。有機物は数層から構成されているものが一般的であり、中央の発光層を挟んでプラスとマイナスそれぞれの電極と接する輸送層を持ち、輸送層は電極から発光層へ向かう電荷をスムーズに運ぶ働きをする。

有機ELに電圧をかけると、2つの電極からそれぞれプラスとマイナスの電荷を持つ「正孔」、「電子」が発生する。両者が発光層で結合すると、発光層である有機物はいったん「励起」と呼ばれる高エネルギー状態になり、これが元の安定状態に戻る際に発光する。

有機物の分子構造の組み合わせは無限であり、その中から発光効率と耐久性を兼ね備えた有機物を見つけることが実用化への決め手になる。有機EL に用いられる発光材料は、分子の大きさの違いから低分子材料と高分子材料に、発光機構の違いから蛍光発光材料と燐光発光材料に分けられる。低分子材料は主に真空プロセスで成膜し、高分子材料は印刷などのウエットプロセスで成膜する。電流により生成される励起子には一重項励起子と三重項励起子があり、蛍光発光材料を用いた場合は一重項励起子が、燐光発光材料を用いた場合は三重項励起子が発光に寄与する。原理的に一重項励起子と三重項励起子の生成確率は1:3 であり、高効率有機EL の実現には燐光発光材料を用いることが有効である。

発光効率が高い燐光物質では10億回の繰り返し発光などに耐えうる有機物を合成し、蛍光灯以上の発光効率、寿命を長くできる耐久性、輝度が最低1000 cd/m2以上である有機ELの開発が実用化の鍵となる。燐光発光の寿命特性に関しても、緑色燐光発光デバイスや赤色燐光発光デバイスにおいては、初期輝度1000 cd/m2での輝度半減寿命が20 万時間以上という照明用途にも適用可能なレベルまで到達してきている。これに対して青色燐光デバイスは蛍光発光デバイスよりも高効率化が期待できるが、寿命特性については初期輝度500 cd/m2 での輝度半減寿命は約1 万時間程度に留まっており、まだ課題が残る。

さらに、有機EL を照明光源として実用化するためには、効率と寿命をより高いレベルで満足するだけではなく、照明光源として要求される特性、たとえば演色性を向上して対象物の色調を正しく再現できることや、光束を増大して小さな面積のパネルでも対象物を明るく照らせることなどを満たす必要がある。

光束を増大させるためには、有機膜での発光効率を向上することと、基板から外部への光取り出し効率を向上させる両方の技術が必要である。光取り出し技術にはいろいろな技術が開発されており、この分野の競争も激しい。もっとも簡単な技術は発光面側のガラス表面に内部反射を抑制できるシンプルな半球上のマイクロレンズアレイ(MLA)などの光取り出しシートを貼る技術である。光取り出しを行わない場合の外部量子効率が22%の場合に、このような光取り出しシートを貼る技術では、36%まで効率が向上する。さらに他の技術を採用すると効率を上げることが可能であるが、製造コストも上昇する。例えばボトムエミッションの場合は、電子輸送層に光取り出し機能を持たせて大幅に取り出し効率を改善する方法、陰極の反射率を上げる方法、ガラス基板の屈折率を上げる方法、透明電極の陽極上に光散乱層を形成する方法、その他の方法など様々な方法が開発されている。

陽極に用いられるITO(Indium Tin Oxide)と呼ばれる酸化インジウム錫などの透明電極に関しては、インジウムを使わない電極の開発が進んでいる。さらに、パネルを大型化する場合は10Ω/□以下のシート抵抗も求められる。この分野は、ナノ材料などを用いたEUでの国家プロジェクトでの開発が進んでいるようにも思える。

この透明電極の技術分野では、ナノテクノロジーを使った材料技術と、低価格でプロセスを行える塗布型やその乾燥技術など多くの課題がある。透過率80%以上が要求され、屈折率も他の膜に近い値が望ましい。導電性ポリマーは透明性が高いものが得られているが、シート抵抗が100Ω/□以上と高いのが欠点である。Agナノワイヤーを使った導電性インクも100Ω/□以上と高い。Saint-GobainではITOと金属膜の積層で低抵抗を達成している。あるいは、銀ナノ粒子自己組織膜なども開発されているが、平滑性などに課題が残る。透過率と平滑性と抵抗と生産性などのすべての性能が高い材料・プロセスが求められる。

封止技術は、従来はガラスによる封止が主流であったが、CVDと印刷・塗布技術の組み合わせによる製膜でバリア膜を形成する技術が実用化されつつある。過去には、スパッタにより有機と無機の膜を交互に積層して高いバリア性を得ることが実用化されたが、生産性が低く、プロセスコストが高いために普及しなかった。今後は、低コストなバリア膜の開発競争が進んでゆくと予想される。ロール・ツー・ロール方式でも、高速での製造が求められるので、従来の真空プロセスから、印刷・塗布技術への転換が進むと考える。

有機EL照明の用途としては、高級なシャンデリア照明、スタンド照明、店舗用の装飾照明は既に一般に使われており、さらに壁に取り付けて足元を照らすナイトランプや玩具などの市場で使われることが予想されている。透明な基板上での照明機能が使用される場合は、天井、壁、窓や鏡とも組み合わせて、室内や自動車・列車・飛行機内での使用が考えられている。具体的にはフィッリプスが有機EL照明付き窓の試作品を発表している。太陽光導入照明と有機EL照明窓との組み合わせなども研究されている。またフレキシブルな基板が、車載用、道路サインや非常灯や天井照明として使用されることも予想される。

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posted by 照明情報ブログ at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 照明 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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